嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
(多分、嘘だわ)
その表情を見てピンときた。アイリスは名言こそしないものの、テオドールはきっとリーゼロッテには知らせたくないような場所で寝ているのだろう。
(やっぱり予想通りなのね)
リーゼロッテは悶々とする。
テオドールには愛する女性がいるが、なんらかの障害で結婚することができなかったのだ。その障害の最たるものがリーゼロッテなのだろう。
(つまり、わたくしは邪魔者ってことね)
そうであれば、疎ましく思われるのも当然だ。
(困ったわね)
貴族の当主の妻にはいくつかの大事な役目がある。社交を通して有力貴族達と良好な関係を築くことや、屋敷内の執り仕切り、そして、最大の役目は後継ぎとなる子供を産むことだ。
しかし、テオドールが会ってくれないのでリーゼロッテは未だにこれらのことに手つかず状態だ。さらに、最も大事な役目に関してはテオドールの協力がなければ実現不可能だ。
(その愛人が産んだ子供をわたくしが産んだことにして……いいえ、だめね。母親と子供を引き離すことになってしまうわ)
結局、何の解決策も浮かばない。
気分を変えようと紅茶を飲んでいると、アイリスが窓の外を眺めながらつぶやく声が聞こえた。
「まあ、マーガレットの花が咲いているわ。もうそんな季節なのね。あっという間に一年経ってしまいそう」
(あっという間に一年?)
そのとき、はっとした。