嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
(怖い)
恐怖で体が震えた。力任せで容赦のない暴き方に、無垢な体は悲鳴を上げる。
立派な公爵令嬢であろうと努力してつもりなのに。婚約者に裏切られ、手ひどく捨てられた。見せしめのように辺境の地に追いやられて、挙句の果てに嫁いだ先の夫にはまるでいないかのように扱われ、よかれと思って離縁を申し出たら憎しみを向けられた。
(……痛い)
痛い。体も痛いけれど、心が痛かった。まさかこんなことになるなんて、想像すらしていなかったのだ。
(どうしてこんなにも、この人から憎しみを向けられなければならないの?)
心の中で問いかけても、答えを返してくれる人などいない。
蝋燭が消えた薄暗い室内に、月明かりが差し込む。ぼんやりと浮かび上がる天蓋を見つめる緑色の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。