嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「全て、旦那様のご意思に従いましょう。今すぐ出て行けというならば、明日にも去ります」
「……んなに、ここを去りたいか」
急激に怒りが湧き起こる。
血に塗られた辺境伯、野蛮な軍人、人殺し。これまでも陰でテオドールを侮辱する連中は数多くいた。しかし、こんなにも正面切ってバカにされたと感じたのは初めてだ。
知らず知らずのうちに、テオドールの声には怒気が混じっていた。一方のリーゼロッテは、なぜテオドールが怒っているのかさっぱりわからないような顔をしている。
「そんなにここを去りたいのかと聞いたんだ」
「わたくしは──キャッ!」
リーゼロッテが何かを言いたけたが、それよりも早くテオドールは彼女の手首を掴み強く引いた。
凛とした態度だったリーゼロッテが急に怯えた様子を見せ、溜飲が下がる。このままこの女を組み敷いてやりたいという、嗜虐的な考えが頭に浮かんだ。
「全て、旦那様のご意思に従いましょう、か。見上げた忠誠心だな」
テオドールはリーゼロッテに顔を近づけて、にやりと笑う。
「いいだろう。では、好きにさせてもらう。離縁したあとは後妻を娶ろう」
「……っ、ありがとうございます!」
リーゼロッテはパッと表情を明るくする。
(そんなにも離縁するのが嬉しいか)
その嬉しそうな表情に、ますます苛立ちが募った。