嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
 怪訝な顔で周囲を見回していると、ちょうどそこに通りかかったメイド長と目が合う。

 「旦那様! お待ちしておりました。準備は整っておりますので」
 「準備? なんのだ?」
 「もちろん朝食でございます。さあさあ、行きましょう!」

 メイド長に半ば引きずられるように連れていかれたのは、いつも朝食をとっているダイニングルームだった。

 (なぜ今日はこんなに急かすんだ?)

 普段なら、呼びにすら来ないのに。
 しかし、疑問はドアを開けた瞬間に解決した。ダイニングテーブルの向かいには、リーゼロッテが座っていたのだ。
 彼女も無理やり使用人達に連れて来られたのだろう。おどおどして落ち着かない様子だ。

 「だ、旦那様! おはようございます」

 リーゼロッテはテオドールに気づくと、慌てたように立ち上がってお辞儀をする。

 「あの、本日はこちらの部屋で朝食をとるようにとセドリックに言われたのですが、よろしいのでしょうか? わたくしは別室かお時間をずらすのでも構いませんので、先に旦那様にお召し上がりいただいて──」

 リーゼロッテの機嫌を窺うような視線を感じ、頭が痛くなる。テオドールがさんざんリーゼロッテを避けてきたので、彼女はテオドールが同席を嫌がると思っているのだろう。

 「いい。そこで食べろ」
 「え? よろしいのですか?」
 「構わない」

 リーゼロッテは戸惑ったような顔をしたが、結局は大人しく席に座った。
 わかりやすくにこにこした使用人達が意気揚々と食事を準備する。テオドールはそれを見てまた頭が痛くなるのを感じた。

 普段に比べて明らかに豪華なそれは、本来であれば結婚式翌日に領主夫婦に振る舞われるものだ。よくもまあ今朝急にこんなものを用意できたものだと驚きを禁じ得ない。
 どういうことだと部屋の隅にいたセドリックを睨むが、彼はどこ吹く風で涼しい顔をしていた。

 「まあ。随分と豪華な食事なのですね」

 正面に座るリーゼロッテはその食事を見て感嘆の声を上げる。
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