嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
「旦那様はいつも、こんなにたくさんのお食事を?」
「……いや、普段はもっと質素だ」
「では、今日はたまたま豪華なのですね。ご一緒させていただきありがとうございます」
リーゼロッテはテオドールを見つめ、ふわっと笑みを浮かべる。そこに、悪女の欠片はみじんもなかった。
朝食を早々に切り上げたテオドールは足早に執務室に向かうと、乱暴に椅子に座った。
「一体どうなっているんだ!」
テオドールは王都で悪名高い毒婦──リーゼロッテと国王のとりなしで結婚した。後日やって来たリーゼロッテは事実として、テオドールが居ぬ間に見張りの護衛を誑かすような毒婦だった。さらに、テオドールとの結婚について『最悪の気分だわ』と臆面もなく不満を漏らしていた。
そのため、テオドールは彼女をいないものとして扱うことにした。この縁を繋いだ国王の顔を汚さずに済み、お互いにとって最善の方法がそれだと判断したからだ。
その間に、リーゼロッテが町に出て男と密会しているようだという情報は幾度となくテオドールの元にも届いていたが、敢えてそれは放置した。形だけの妻になど興味がなかったし、関わりたいとも思わなかったからだ。さすがの彼女も、白い結婚の最中に子供ができるような失態は起こさないだろう。
その関係が崩れたのは昨日のこと。リーゼロッテが突然離婚してくれと言いだした。これまで好き勝手にやって来た分際で最後の最後まで人をバカにしていると頭に血が上り、テオドールは彼女に乱暴をした。それくらい、あの女にとっては大したことではないと思っていたのだ。
ところがだ──。
「毒婦じゃないのか? いや、純朴そうに見せかけて俺を騙す策略かもしれない。しかし、屋敷の使用人達の様子も──」
考えれば考えるほどわからなくなる。だが、そんな中でもひとつ間違いないことがある。