嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
それは、この屋敷の使用人たちは皆、リーゼロッテのことをラフォン辺境伯夫人として好意的に受け入れているということだ。先ほどの様子から判断するに、彼らはテオドールと彼女が一線を越えたと知ってとても喜んでいた。
万が一リーゼロッテが毒婦だったとしても、屋敷の使用人全員までをも騙すことは無理だ。
(わけがわからないな)
まるで狐に抓まれたような気分で悶々としていると、部屋をノックする音がした。
「テオ。入るぞ」
返事をするより先に、ドアが開く。カルロだ。
「今週分の報告書だ」
カルロは厚さ五ミリほどの書類をテオドールに手渡す。毎週定例の、国境警備隊からの報告書だ。
「ああ、ありがとう。何か気になることは?」
「先週、隣国のナリータからイスタール国室宛に信書が届いていた」
「信書?」
テオドールはカルロから渡された報告書に添付された、重要な郵便物のリストを眺める。そこには確かに、隣国のナリータの王室からイスタールの王室に信書が届いた旨が記載されていた。