嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉


 一時間後。テオドールは事の顛末について報告を受け、眉間に深いしわを寄せていた。

「意味がわからない」
「俺も初めてのケースだ。驚きだな」

 カルロも腕を組んで、難しい顔をしている。

 商人たちは幻獣騎士団に野生のヒッポグリフを納品するためにラフォン領主館、すなわちこの屋敷に向かっていた。ところが、思ったよりも町に人出が多く、人ごみに驚いたヒッポグリフが興奮して暴れ出したらしい。

「目撃者によると、ヒッポグリフ達はたまたまそこに居合わせた奥様を見たとたん急に暴れるのをやめて、尻尾を振って近づいて行ったらしい」
「ヒッポグリフが尻尾を振る、ねえ」

 にわかには信じがたい。野生のヒッポグリフがパートナーでもない人間に尻尾を振るなんて聞いたことがない。

 しかし、ヒッポグリフ達がリーゼロッテにじゃれついている現場はテオドールも目撃したので、これは事実なのだ。

「やっぱ、幻獣も美女が好きなんだな。奥様、すげー美人だもんな。なあ、テオ。これを機に、幻獣騎士団にも美人な女性騎士を──」

 カルロが寝ぼけたことを言い始めたので、テオドールは彼の言葉を遮る。

「ルカードによると、リーゼロッテは甘い匂いがするらしい」
「食べ物かよ」

 すかさずカルロが突っ込みを入れる。

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