婚約破棄?   それなら僕が君の手を
 夏の休暇が終わると、王宮府の試験や騎士団の試験が行われる。リシェルの学年でそれらを受験するのは四分の一に満たない。女生徒の受験者はほぼいない(皆無ではない)し、家業を嗣ぐ貴族子息は受験しないので、クラスの中でも空気が二つに分かれていた。

 どちらの試験も会場は学園で、学園が休みの日に行われた。学園の生徒ではない受験者もわずかにいるが、彼らもその日は学園にやってくることになる。
 筆記試験の他に面接もあるが、面接官は学園の教師なのであまり緊張感はない。騎士団は更に実技試験もある。こちらは騎士団から試験官が来るらしく、アントンはちょっとビクビクしていた。(顔が怖いので、そうは見えなかったけど)

 その2つの試験が終わると、最終学年は一気に卒業に向けた準備に入る。試験が終わったことでリシェル達は気が抜けている(結果の発表はまだだ)が、学園内婚活は佳境を迎えている、ようだ。
 ようだ、としか言えないのはリシェル達が婚活とは遠いところにいるからである。友人の中には婚約しているのもいるが、アントンを筆頭にあまり婚約者探しに積極的ではなく、女生徒からのお誘いがあっても皆断ってしまうのであった。
「君たち、結婚しないのか?」
リシェルがたずねる(完全に自分の事は棚に上げている)と
「職場が決まらないと落ち着かない。」
と返ってきた。次男や三男だとそういう考えになるのか、そうだよね、と納得し、試験結果を待つことにした。
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