婚約破棄?   それなら僕が君の手を

公爵家の茶会

 卒業パーティーが終了すると、リシェル達は学園を後にする。5年間通ってできた友達ともお別れとなる。寂寥感に浸っていると一番の友がやってきた。
「本当にいいのか?」
「何が?」
「ケント公爵邸に招待されたのだが。」
招待したのはリシェルである。
「アントンにはいろいろ助けてもらったからね。ちょっとしたお礼だよ。ジェシーにも会ってみたいって言ってたし、いい機会だと思って。」
ジェシーとは三番目の兄である。近衛騎士団に移動になる前の休暇に屋敷に帰ってくると聞いたので、それに合わせてアントンとセイラを招待したのだ。セイラはともかく、アントンも近衛を目指しているので、傾向と対策を知りたいらしい。
「ありがとう。」
アントンは嬉しそうに笑った。
 学園では家格の上下はあまり気にしないことになっているが、卒業したらこんなにフランクに話せるかわからない。リシェルはあまり家柄に頓着していないので大丈夫だと思うが、周りがよく思わないだろう。それでも公爵家に招待してくれるのはリシェルやケント家の優しさだと思われた。
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