婚約破棄? それなら僕が君の手を
リシェルは黒いパンツに白いシャツ、キャメルのロングカーディガンというラフな格好でニオル伯爵家を訪ねた。偶然を装う為と家格の差を感じさせない為でもあった。
王太子カイトに今回の件を話すと、王太子もジェシーも「女装で茶会に混ざってはどうか」と提案してきたが、リシェルは「絶対にイヤだ。」と拒否をした。二人ともリシェルの抵抗に驚いていた(普段のリシェルは割と流されるタイプである)が、リシェルはルーナに嘘をつきたくないと思ったのでリシェルのままで会う事にした。
空に雲ひとつなく晴れた日、茶会はニオル家の中庭のガゼボで開かれていた。開かれていた、といってもセイラとルーナだけである。同じクラスで同じ伯爵令嬢である二人は時々声を交わす程度であったらしいが、例の夜会の後、セイラが声を掛けたり、クラスの移動やランチを一緒にしたりと、ルーナを気にしていた。おかげで、この茶会もすんなりと受け入れられたそうだ。
中庭は初夏の緑が鮮やかで、季節の花もとりどりに咲いている。二人はその中で穏やかに話をしているようだった。
30分ほど経った頃、リシェルとアントンは中庭を散歩するていで、ガゼボに近づいた。
「あら、お兄様。」
セイラがこちらに気づく。ルーナは驚いて立ち上がり、アントンに向かって礼をする。
「セイラの兄のアントンだ。」
アントンが自己紹介すると、ルーナも
「テイラー伯爵家のルーナと申します。はじめまして、アントン様。」
と返してくる。
「こちらは友人のリシェル。」
アントンは続けてリシェルをルーナに紹介する。
「久しぶりだね、ルーナ嬢。」
『えっ???』
リシェルの言葉に、三人はとても驚いていた。
王太子カイトに今回の件を話すと、王太子もジェシーも「女装で茶会に混ざってはどうか」と提案してきたが、リシェルは「絶対にイヤだ。」と拒否をした。二人ともリシェルの抵抗に驚いていた(普段のリシェルは割と流されるタイプである)が、リシェルはルーナに嘘をつきたくないと思ったのでリシェルのままで会う事にした。
空に雲ひとつなく晴れた日、茶会はニオル家の中庭のガゼボで開かれていた。開かれていた、といってもセイラとルーナだけである。同じクラスで同じ伯爵令嬢である二人は時々声を交わす程度であったらしいが、例の夜会の後、セイラが声を掛けたり、クラスの移動やランチを一緒にしたりと、ルーナを気にしていた。おかげで、この茶会もすんなりと受け入れられたそうだ。
中庭は初夏の緑が鮮やかで、季節の花もとりどりに咲いている。二人はその中で穏やかに話をしているようだった。
30分ほど経った頃、リシェルとアントンは中庭を散歩するていで、ガゼボに近づいた。
「あら、お兄様。」
セイラがこちらに気づく。ルーナは驚いて立ち上がり、アントンに向かって礼をする。
「セイラの兄のアントンだ。」
アントンが自己紹介すると、ルーナも
「テイラー伯爵家のルーナと申します。はじめまして、アントン様。」
と返してくる。
「こちらは友人のリシェル。」
アントンは続けてリシェルをルーナに紹介する。
「久しぶりだね、ルーナ嬢。」
『えっ???』
リシェルの言葉に、三人はとても驚いていた。