婚約破棄? それなら僕が君の手を
王太子カイトがローズクォーツの印璽を持ち、真っさらな紙に印を捺す。そして、その紙と契約書に捺された印を見比べた。
「ほぼ同じだな。」
その言葉にゲイツ侯爵はほくそ笑んで
「それはそうでしょう。その契約書に偽りはありませんからな。」
と発言する。
「間違いなく、夫人が契約書に同意されたのですよ。」
その言葉を聞いたリシェルは不安になる。アントンに渡す前にチラリと確認した印面は、間違いなく契約書に捺されたものだと思ったのだが。
王太子も二つを見比べながら複雑な表情をしている。
ゲイツ侯爵が勝ち誇った表情を見せていると、対面に座っているルーナが王太子の持つ紙を覗き込んで首を横に振った。
「いいえ。この二つには異なるところがありますわ。」
ルーナのその発言に、テイラー伯爵も驚いている。
「ルーナ嬢、私には同じに見えるのだが、何処が違うのか説明してもらえるだろうか。」
王太子が言うと、ルーナは契約書の印のある部分を指さした。
王太子は再度二つの印を見比べる。そして
「確かに、違う物だと言えるな。」
と断言した。
それに納得がいかないのはゲイツ侯爵だった。顔を真っ赤に上気させ
「どこが違うというのだ!その印璽が契約書に捺されているだろう!」
と声を荒げている。
その大声に怯むことなく、ルーナは王太子に説明を始めた。リシェルはそれを書き留めていく。
「お母様はこうなる事を予想していたのかもしれません。私にだけ、印面に傷があることを教えてくださったのです。『印面に使われている金は柔らかいから傷がついてしまったのよ。』と。ですが、いま手元にある印璽を捺してもその傷がありません。印面も金に混ぜ物が多いのか硬い感じがして、傷つきそうにありません。」
「ほぼ同じだな。」
その言葉にゲイツ侯爵はほくそ笑んで
「それはそうでしょう。その契約書に偽りはありませんからな。」
と発言する。
「間違いなく、夫人が契約書に同意されたのですよ。」
その言葉を聞いたリシェルは不安になる。アントンに渡す前にチラリと確認した印面は、間違いなく契約書に捺されたものだと思ったのだが。
王太子も二つを見比べながら複雑な表情をしている。
ゲイツ侯爵が勝ち誇った表情を見せていると、対面に座っているルーナが王太子の持つ紙を覗き込んで首を横に振った。
「いいえ。この二つには異なるところがありますわ。」
ルーナのその発言に、テイラー伯爵も驚いている。
「ルーナ嬢、私には同じに見えるのだが、何処が違うのか説明してもらえるだろうか。」
王太子が言うと、ルーナは契約書の印のある部分を指さした。
王太子は再度二つの印を見比べる。そして
「確かに、違う物だと言えるな。」
と断言した。
それに納得がいかないのはゲイツ侯爵だった。顔を真っ赤に上気させ
「どこが違うというのだ!その印璽が契約書に捺されているだろう!」
と声を荒げている。
その大声に怯むことなく、ルーナは王太子に説明を始めた。リシェルはそれを書き留めていく。
「お母様はこうなる事を予想していたのかもしれません。私にだけ、印面に傷があることを教えてくださったのです。『印面に使われている金は柔らかいから傷がついてしまったのよ。』と。ですが、いま手元にある印璽を捺してもその傷がありません。印面も金に混ぜ物が多いのか硬い感じがして、傷つきそうにありません。」