政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

もしかしたら会社を畳もうとしているのはないか。だから三人をここへ招集した。

明花はハラハラしながらも、押し黙ったまま父たちを見守る。不用意に口を開けば、怒りの炎に油を注ぐだけだ。


「じゃあどうするの? このままじゃまずいんでしょう?」
「私、お父さんの会社が倒産なんて困るし嫌よ。なんとかして」


一番困っているのは秋人だろうに、照美と佳乃が興奮気味に煽る。
夫や父親の不貞を理由に散財し、贅沢を美徳としている節のある彼女たちにとって倒産は耐えがたいだろう。


「じつは資金援助を申し出てくれている会社があるんだ」
「なんだ、そうなの。それを早く言ってよ、お父さん。無駄な心配をしたじゃない」
「そうよ、あなた。ハラハラさせないで」
「そんなつもりはない。悪かった」


それまで身を乗り出していた佳乃は呆れたようにソファの背もたれに体を預け、照美は隣に座る秋人の肩を軽く叩いた。

不安が募り落ち着かなくなっていた明花も、ほっと胸を撫で下ろす。
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