政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ね? 明花さん」
テーブルに頬杖をつき、美也子が同意を得るべく小首を傾げる。
「は、はいっ」
いきなり話を振られ、急いで頷いた。
彼女が言うように、貴俊がテレビでもネットでも自ら出れば、妙な噂話など簡単に払拭できるだろう。
「仕事の出来不出来は見た目とは関係ない。言いたいやつには言わせておけばいいんだ」
「さすが、桜羽のぼっちゃんは余裕だねぇ」
我関せずといった様子で涼しげな顔をしてワインを飲む貴俊に、高柳は楽しそうに笑う。
「明花さん、コイツ、何事も完璧にできそうに見えるだろう?」
「はい、そうですね」
まさしくそう思っているため、深く頷く。
(仕事はもちろんそうだろうし、私生活もきっちりしてそう。マンションの部屋も整理整頓がしっかりしていたもの。できないことなんてなさそう)