政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「すみません、ちょっとお手洗いに行ってきます」
美しいラグーンを横目に店内に戻る。改めて見渡すと、どのグループからも楽しげな声が聞こえ、たくさんの人でとても賑やかだ。
(貴俊さんとはあまり仲が良くないみたいだけど、これだけの人がお祝いに駆けつけるんだから、三橋さんも人望はあるんだろうな)
嫌われ者だったら、付き合い程度に花を贈るくらいで済まされてもおかしくない。
(それに、美也子さんたちの話の中にも、三橋さんの名前がちょくちょく出てきたし)
そんなことを考えながらレストルームを出たときだった。
「どうも」
右手をひらりと上げ、ニヒルに笑う男性に出くわす。三橋だった。
軽く頭を下げ、彼の前を通り過ぎようとしたが、壁に手を突き止められる。
「政略結婚なんだって?」
どこで耳にしたのだろうか。貴俊は高柳や美也子にさえ打ち明けていないのに。