政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

三橋は明花の顔を覗き込んだ。


「キミは本当にそれでいいの? アイツ、冷酷で有名だし、なに考えてるのかわからない男だよ」
「貴俊さんは冷たい人なんかじゃありません」


明花にしては珍しく強く反論する。無視を決め込もうとも思ったが、貴俊を悪く言われたままではいたくない。


「そう? それはまだ本性を出してないだけ」
「そんなことありません」


たしかに最初は冷たそうな印象だったけれど、それは優しさがさり気ないから。あからさまに見せつけたり、押しつけがましかったりしないからだ。


「もう一度よく考えなおしたほうがいいんじゃない?」


三橋が目を細めて明花を見下ろす。

(考えなおす? この結婚を? ……貴俊さん以外との未来を?)

不釣り合いだとわかっているのに、彼とはべつの人の隣に立つ自分を想像できなかった。
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