政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

(援助してくれる会社があるならよかった……)

このまま倒産にまっしぐらにでもなったら、明花は照美と佳乃から〝疫病神のせいだ〟と罵られかねない。それは当然の報いだとわかっていても慣れない言葉だから。


「だけど、どこの会社が助けてくれるの?」
「桜羽ホールディングスという会社なんだ」
「桜羽ホールディングスってあの!?」


照美と佳乃が声を揃えて驚く。口にこそ出さなかったが、明花の驚きも同じだった。

桜羽ホールディングスは、不動産や開発、建設会社をグループ傘下に置く日本有数の巨大な企業体である。テレビCMや広告など、名前を聞かない日はないと言ってもいい。


「それじゃ、グループ傘下に入るの?」


佳乃が尋ねる。


「そうなるだろうな。グループ企業と共同で行えば、原材料の調達も安く済む。資金援助はもちろん、人材の確保にも手を貸してくれるそうなんだ」


なんと好都合な話だろうか。そうなれば秋人の懸念は一気に解消される。至れり尽くせりとはこのことだろう。
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