政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

首を横に振り、拒否を表す。再考なんて選択肢、明花にはない。
父を助け、雪平ハウジングを守るためであるのはもちろん――。


「俺でよければいつでも相談に乗るよ。今からでもどう?」


三橋が明花に一歩詰め寄ったそのとき。


「ソウが相談相手じゃ、結論はたかが知れてる」


壁に突いていた三橋の腕を取り、貴俊が明花との間に割り込んだ。
三橋が盛大にため息をつきながら、彼に取られた腕を払う。


「相変わらず失礼なヤツだ」


不快感をあらわにし、これみよがしにスーツのジャケットの乱れを直すようにした。


「他人のフィアンセを口説こうとしている人間の言葉とは思えないな」
「口説いたつもりはない」
「今からどうかと誘っていたのは俺の聞き違いか?」
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