政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

貴俊の眼差しに鋭さが増す。今にも三橋を射ってしまいそうだ。
そばで見ている明花もハラハラしてしまう。


「彼女がタカを買い被りすぎているようだから、教えてあげようと思っただけだ」
「相変わらずとんちんかんだし傲慢な男だな。相手にするのも時間の無駄。明花、行こう」


肩を引き寄せられたため彼の腕に抱かれるような格好になり、トクンと鼓動が弾む。守られるような感覚に胸が熱い。

三橋が苛立ちを舌打ちで表す中、貴俊は明花をそのまま店の外に連れ出した。


「帰るんですか?」
「もう義理は果たしたから」


オープンのお祝いの場に顔を出したからもういいと言っているのだろう。


「美也子さんや高柳さんになにも言わずに大丈夫ですか?」


三橋はともかく、ふたりに挨拶をせずに帰ってしまっていいのかと心配になる。
肩越しに店を振り返りつつ、貴俊に誘われるままに足はエレベーターへ向かう。
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