政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「それじゃ、お茶でも淹れましょうか」
「ううん、明花ちゃん、よかったら旦那様とどう?」
〝旦那様〟に密かにどぎまぎする。まだ結婚して二日目だ。
(まだキスしかしたことはないけど……)
一瞬のうちに浮かんだ余計な雑念を頭から追い出す。
「ですが」
「いいのよ。主人も私もコレステロール値が最近高くてね。生クリームは避けてるの」
奥の方から富一が「そうそう。俺たちには毒だから」と声を大きくする。
「万智ちゃんは煎餅派で、洋菓子系はほとんど食べないでしょう?」
「そうですね」
その万智は今、結婚間近のカップルを連れてアパートの内覧に出かけている。
「だからこれは明花ちゃん担当。今日は土曜日だから旦那様お休みでしょう? ちょうどお客様も途切れているし、差し入れしてきたら?」