政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「俺が淹れるから、明花は座って待ってて」
「では私はこのケーキを切り分けます。ロールケーキだそうで」
「じゃ、そうしよう」
貴俊はふわっと笑い、箱を手にした。
貴俊はコーヒーの準備、明花はロールケーキの準備。ふたりでキッチンに並ぶと、まさに新婚そのもので照れが先行する。
横に立つ彼が気になりながら箱を開けると、目にも美しいロールケーキが姿を現した。
「わぁ」
思わず感嘆の声が漏れる。
「貴俊さん、見てください」
ついテンションを上げながらケーキを取り出して彼に見せた。
生成り色の生地に薄いピンク色のラインが交差し、中にはイチゴと生クリームが包まれている。
「あぁ、ミレーヌのロールケーキか」
箱の印字を見て貴俊が納得する。