政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「ほら、俺のキスでは笑顔にならない。こっちも相当甘いと思うけど」
「……恥ずかしいからです」
「恥ずかしい? 夫婦なのに?」


コクコクと頷いているうちにも耳がカーッと熱くなっていく。


「でも、貴俊さんにキスされるのは……」
「されるのは?」
「……うれしい」


うっかりボソッと呟いた。

(なんてことを打ち明けてるの……!)

自分でも制御が効かず、口が勝手に動いた感覚に困惑する。
貴俊はふっと笑みを零し、背中を屈めて明花の唇にキスをした。


「俺もうれしい」


きっとこれは新婚気分を盛り上げるための演出。貴俊はただ新婚ならではのイチャイチャを演じたいだけだ。

(だって、私たちの間に愛はないから)
< 123 / 281 >

この作品をシェア

pagetop