政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ほら、俺のキスでは笑顔にならない。こっちも相当甘いと思うけど」
「……恥ずかしいからです」
「恥ずかしい? 夫婦なのに?」
コクコクと頷いているうちにも耳がカーッと熱くなっていく。
「でも、貴俊さんにキスされるのは……」
「されるのは?」
「……うれしい」
うっかりボソッと呟いた。
(なんてことを打ち明けてるの……!)
自分でも制御が効かず、口が勝手に動いた感覚に困惑する。
貴俊はふっと笑みを零し、背中を屈めて明花の唇にキスをした。
「俺もうれしい」
きっとこれは新婚気分を盛り上げるための演出。貴俊はただ新婚ならではのイチャイチャを演じたいだけだ。
(だって、私たちの間に愛はないから)