政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

愛を望まない結婚をしたはずなのに、それがないのを嘆くなんてわがままだ。
既定路線の政略結婚に愛を望んではいけない。

念じるようにしながらケーキを切り分け、皿にフォークと一緒にのせる。
淹れたてのコーヒーと一緒にリビングに運んだ。

向かい合って座った彼と同時にケーキを口に入れる。


「……おいしい。これやっぱり桜ロールですね。桜あんのかすかな塩気が生クリームと溶け合って最高においしいです」
「だな。人気も納得だ」


あまりのおいしさにふたり揃ってふたつ目を間食。コーヒーも飲み干した。


「あの、今さらなことを聞いてもいいですか?」
「なに?」
「私たち、以前どこかでお会いしてますか?」


ラフなヘアスタイルと眼鏡をかけた貴俊の姿が、明花の記憶を先ほどから揺さぶっていた。
貴俊が目を大きくした瞬間、ハッとする。


「うちのお店に来店されませんでしたか?」
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