政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

照美の質問に答える秋人に迷いは感じられなかった。おそらくすでに決意を固めているのだろう。
ところがそんな秋人が、次の瞬間には表情を曇らせる。


「ただ……」
「ただ、なに。どうしたの?」
「それにはひとつ条件がある」


工法の仕組み以外にいったいどんな条件があるというのだろう。
明花だけでなく照美も佳乃も、秋人の言葉を聞き漏らさないようにと耳を傾けた。


「桜羽ホールディングスの次期社長、桜羽貴俊くんとの結婚を提示されているんだ」
「結婚!?」


照美と佳乃が声を揃えて聞き返す。

それは衝撃的な条件だった。いくら秋人が社長とはいえ、雪平家が日本を代表する大企業から結婚を打診されるとは思いもしない。格が違い過ぎる。

明花は目を丸くしつつ、今夜ここへ呼ばれた理由がようやく理解できた。
秋人の会社の現状と、佳乃に舞い込んだ縁談を報告するためだったのだ。大企業との婚姻は、一応は雪平家の一員である明花にも多少なりとも関係するから。
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