政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

待ち続け、叶わない願いだと知ったときの絶望なら、嫌というほど知っている。それを経験した貴俊には、約束を反故にはできなかった。

今の明花が貴俊を必要としていないのなら、それでいい。約束を見極めるために、彼女に会う必要があった。


『部屋を探しているんですが』


数日後、貴俊は片野不動産を訪れた。

アメリカから帰って間もない貴俊は、すぐに仕事で多忙になったためホテル住まい。事実、そろそろ部屋を探さなくてはと考えていた。


『いらっしゃいませ。お部屋ですね。では、こちらにおかけください』


会うのは二十数年ぶり、それもほんの数時間過ごしただけの相手。見ず知らずも同然の女性なのに、なぜか妙に親近感を覚える。


『どういったお部屋をお探しですか? 絶対に外せない条件はありますか? 例えば駅近や部屋数、日当たりですとか』


明花はタブレットを操作しながら、貴俊に質問をしてきた。
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