政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「私も政略結婚なんて嫌よ。桜羽グループの御曹司っていったら冷酷って噂だし、そんな大きな会社の跡取りなのにメディアにいっさい顔出ししてないんだもの、きっと世間に顔を見せられないほど不細工に決まってるわ。いくらお金持ちでも、私はそんな人と結婚なんて絶対にしないから」


佳乃が息巻く。彼女は無類のイケメン好きである。
どこで情報を得るのか、富裕層をターゲットとした彼女独自のイケメンランキングがあるというのを大学時代に人づてに聞いたことがある。そういった人たちにいかにして近づくか日夜試行錯誤しているのだとか。

もう四年以上も前に耳にした話だが、今もそうなのかもしれない。

(だけど今回ばかりはきっと、そうも言っていられないような……)

なにしろ父親の会社の未来がかかっているのだから。


「明花がすればいいでしょ」
「えっ、私?」


いきなり表舞台に上げられ、明花は思わず声が上ずった。
まさかそうくるとは想像もしていない。いくら佳乃が拒もうと、縁談は彼女が受ける以外にないだろうと思っていたところだったのだから。
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