政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「そうよ、あなたが結婚すればいい話じゃない。一応は雪平家の人間なんだから」
「でも、私では不相応では……。大企業の方がお相手ならなおさら、長女のお義姉様のほうが適任じゃないでしょうか……」


なにしろ明花は愛人の子どもである。純粋な雪平家の娘といったら佳乃だ。
決して押しつけるつもりはなく、先方に対して失礼ではないかと遠慮がちに言ったつもりだが……。


「私に口答えするの?」


癪に障ったらしく、佳乃が険しい顔をして明花を見る。
いつもなら『愛人の子は雪平家の恥』と罵るのに、都合が悪くなったため『雪平家の人間だ』と手のひらを返してきた。

(お父さんの会社の存続がかかった大事な局面なのに正気かな……)

明花の額に嫌な汗が滲む。


「そうね、明花が嫁いだらいいわ。政略結婚なんて浮気されるのがオチだもの」


照美まで娘と結託し、激しく同調する。
< 16 / 281 >

この作品をシェア

pagetop