政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
頷くかわりにゆっくり瞬きをした彼の目が、にわかに熱を帯びていくのがわかり、鼓動が徐々にスピードを上げていく。もう時間稼ぎは無理だと悟る。
「今すぐ俺を好きになれとは言わない。だが絶対に好きにさせるから、明花は黙って俺に愛されていればいい」
独占的で執着にまみれた感情が声や口調、眼差しから伝わってくる。決定的な言葉の破壊力は凄まじかった。
(……貴俊さんが私を……愛して、る?)
驚きと同時に唇が塞がれる。繋がれていた指先に反射的に力が入った。
握り返された手の力とは裏腹な優しいキスが、明花の体の強張りを解いていく。ふわふわした心地なのに、体の奥からせり上がってくる感情で胸がチリチリと熱い。
その正体がなにか、明花は気づいていた。
もう黙ったままではいられない。想いを打ち明けてくれた彼に、明花も自分の言葉でしっかり伝えたかった。
彼の胸を押してキスを解く。
貴俊はなぜ?と疑問を滲ませ明花を見下ろした。