政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

聞き返したそばから、唇が再び彼によって塞がれる。さっきまでの慈しむようなキスとは打って変わり、閉じていた唇を割り彼の舌が侵入してきた。

熱いと思った数秒後にはふたりの体温が混ざり合い、どちらの熱だかわからなくなる。舌を絡めて吸われ、口腔内を舐め尽くされ、淫らな水音が明花の思考を奪い、頭は次第に白く霞んでいく。

もうこのまま溶けてしまいたい。

そう願うほどキスに溺れ、彼の舌の動きに必死に合わせているうちに、体が芯から火照っているのを感じた。
たぶん、それは貴俊も同じ。湿気を孕んだ吐息の温度でわかる。

気づけば明花は、彼の前に素肌を晒していた。
息もつかせないほど熱烈なキスに夢中になっているうちに、貴俊が着ているものを器用にはぎ取っていったのだろう。

思わず胸の前で腕をクロスさせた。


「怖い?」


そう聞かれて首を横に振る。
彼との行為に怖いものはなにもない。


「初めてなので恥ずかしいだけです」
「それじゃ俺も脱げば、おあいこだ」
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