政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
インターフォンが鳴らされるとすれば宅配便くらいのものだが、荷物が届く予定はなかった。
ロッキングチェアを揺らして立ち上がり、明花が受話器に行くまでにさらに二度もインターフォンが鳴る。よほど急いでいるみたいだ。
慌てて応答ボタンを押した明花は、モニターに映った顔を見て凍りついた。
「どうして……?」
義母の照美と義姉の佳乃だったのだ。
なぜ、ふたりがここへ。
嫌な音を立てた鼓動が、みるみる速くなっていく。
『ちょっと明花、いるんでしょう?』
苛立ったような佳乃の声に明花は体をビクンと揺らす。
応答ボタンを押したことを後悔した。居留守を使えばよかったと思わずにいられない。
急かすようにインターフォンが鳴らされる。
『明花、答えなさい。いるのはわかってるのよ』
照美が明花を揺さぶりにかかる。義母の命令を前に、明花は無力なのだ。