政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
簡単に過去に引きずり込まれてしまう。
「……はい」
絞りだした声は震えた。
『やっぱりいるんじゃないの。早くここを開けなさい』
命ぜられるままにセキュリティを解除する。
(いったいなにをしに来たの……)
不安が膨れ上がり、加速する鼓動のせいで息がしづらい。
ほどなくして再度インターフォンが鳴った。
ドンドンとドアを叩く音が明花を焦らせる。スリッパを鳴らして玄関へ急ぎ、ドアを開けた。
姿を現したふたりが、強烈な怒りのオーラを放つ。
「上がるわよ」
明花が招き入れるまでもなく、ふたりがずかずかと上がり込む。
その背中を明花が追いかけた。