政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「こんなに立派な家に住むなんて、明花のくせに生意気」
腹立たしさを隠しもせず、佳乃が不満を口にする。
(この結婚から逃げたのは、お義姉様のほうなのに)
そう思っても、決して口には出せない。
「あの、お茶でも淹れますので……」
恐る恐る口を開いたが、ふたりから同時に鬼の形相で睨まれて震えあがった。
「そんなものいいから、そこに座りなさい」
照美が指差したのは、ソファでもラグの上でもなくフローリングの上だった。
いくらなんでもそれはない。ここは貴俊と明花の家なのだから。
以前の明花だったら簡単に従っていたかもしれない。でも貴俊に愛されて少なからず自信をつけた明花は、及び腰になりつつもソファに座った。
とはいえ小刻みに震える手はどうしても止まらない。どんな叱責を受けるか考えると、本当は堪らず怖いのだ。
「随分と偉くなったものね」