政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
案の定、辛辣な言葉が飛んでくる。
それでも動かない――正しくは動けない明花の向かいにふたりは不服そうな顔をしてどかっと座った。
「早速だけど、明花、あなた離婚しなさい」
「……はい?」
顎を引いた照美の声は、地を這うみたいにおどろおどろしい。
「聞こえなかった?」
「お母さんはあなたに離婚しなさいって言ってるのよ」
照美の言葉を佳乃が繰り返す。
聞こえなかったわけではない。理解不能なだけだ。
「あの、おっしゃっている意味が……」
明花は首を傾げるほかにない。
「離婚がわからないなんて、あなたバカなの?」
「大学も出させてやってこれなんだもの。呆れるのを通り越して憐れだわ」
「離婚はわかります。ですが、雪平ハウジングを助けるために結婚しろとおっしゃったのは、お義母様とお義姉様では……」