政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
貴俊は最初から明花との結婚を望んでいたと言ってくれたが、そもそもその話が出たときに絶対に嫌だと突っぱねたのは佳乃のほうだ。
「私は、世間に顔出しできないほど容姿が悪い御曹司は嫌だって言ったのよ。桜羽の御曹司がイケメンだって、どうして黙っていたの? お見合いのときにわかったはずよ? それなのに私に知らせないって、いったいどういうつもり? 横取りなんていい度胸ね」
佳乃が無茶苦茶な持論を展開する。
おそらく貴俊のインタビュー記事を見たのだろう。金持ちのイケメン探しに余念のない佳乃なら、経済誌をチェックしていてもおかしくない。
「あなた、わざと佳乃に言わなかったのよね? 地位も名誉もある、容姿の優れた男の妻の座を姉に譲りたくなくて」
「そんなっ」
言いがかりもいいところだ。
「そうに決まってるでしょ、お母さん。陰で私をあざ笑っていたのよ」
明花を顎で指し、卑屈な表情を向ける。