政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

そんなときに出会ったのが明花の母だった。
夫婦関係が破綻しているとはいえ不倫は許されるものではないが、初めて心から愛せる人と出会い、気持ちに歯止めが効かなかったのだと。

そうして産まれたのが明花だったため、母が亡くなったときには離婚も辞さない強い気持ちで保護に乗り出した。
裕福な生活を手放したくない照美との利害が、ある意味一致したと言っていいのかもしれない。


「だけどあちらの条件を飲まないと援助はしてもらえないんでしょう?」
「まぁそうなるがね……。でも明花に幸せな結婚をしてもらいたいのも事実だから。明花が嫌だというのなら、ほかの道を探せばいい」


会社の発展のために意に添わない結婚をした秋人だからこそ、娘に同じ道を歩かせたくない想いもあるだろう。愛する人の忘れ形見だからなおさらかもしれない。
そんな親心はありがたく、とてもうれしい。

でもこのままではそうして父親が守ってきた会社がなくなってしまう。それをなにもせずに眺めているのだけは、どうしてもできない。

これまで生きてこられたのは秋人の存在があったからであり、イヤイヤとはいえ明花をこの家に迎えてくれた照美と佳乃のおかげでもある。
恩返しをする絶好の機会と言っていた照美の言葉は、まさにその通りだ。
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