政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「お父さん、私でよかったら、その結婚お受けします」


会社を救うことで恩返しになるのなら、これ以上のものはない。きっと母も空の上で〝そうしてあげて〟と言っているに違いないから。


「……本当にそれでいいのか?」
「好きな人も恋人もいないから心配しないで。結婚で雪平ハウジングを守れるのなら」


明花の中に迷いはなかった。
第一、明花には現在も過去にも恋愛経験がない。憧れに近い好意なら抱いた経験はあるが、恋愛には発展しなかった。

学生時代には雪平家で暮らしていくことに必死だったし、家を離れてからは照美と佳乃からの嫌がらせへの対処で手いっぱい。とても恋愛どころではなかった。


「本当にすまないな、明花。ありがとう」


唇を噛みしめ、秋人が今にも泣きそうな顔になる。娘に対する申し訳なさと、会社が持ちなおす安堵が入り混じり複雑な気持ちなのだろう。


「だけど、どうして資金援助の条件のひとつが結婚なの?」
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