政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

(意外と避けられていたんじゃないかな)

思い出して笑いが零れる。


「そうだな。ものすごく気分もいい」
「ふたりに鉢合わせしたときにはどうしようかと思いましたけど……。いろいろ準備してくださったんですね。ありがとうございました」
「明花を侮辱させたままで終わらせるつもりはなかった。天誅を下さなきゃ、俺の気持ちが収まらない」
「まさか会社の資金を流用していただなんて。この店のオーナーなのも初めて知りました」


資金流用を知った秋人も、さぞかしショックだったろう。今まで後ろめたさがあったため、わがままはなんでも聞いてきたのだろうが、さすがに今回は許せなかったに違いない。
だから任期満了での退任を承認しただろうから。


「不愉快極まりなかったが、明花から〝愛してる〟って言葉を聞けたから最高の気分だ」
「……恥ずかしい」


今それを持ち出されると照れくさくてたまらない。


「俺はうれしいけど」
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