政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
雪平ハウジングの工法を手に入れたいのはわかるが、結婚は桜羽ホールディングスほどの大企業が提示する条件とは思えない。
「それは父さんにも詳しくはわからないんだが……」
もしかしたら佳乃が言っていたように容姿に恵まれず、あまりの冷酷さのため縁談がことごとくうまくいかないのかもしれない。どの令嬢も遠慮したくなるほどの御曹司なのではないか。
資金に困っている雪平ハウジングであれば、喜んで縁談を受けるだろうと桜羽家も考えた可能性がある。
だからといって明花は、自分の申し出を取り消すつもりはないけれど。
「ただ父さんは、最初から佳乃を桜羽家に差し出そうとは考えなかった」
「そうよね、雪平家の大事な長女だもの」
いくら照美との関係が悪くても佳乃は純粋な雪平家の娘であり、大切な存在であるから。
(それは当然と思うくせに寂しく感じるなんてどうかしてるよね)
恩に背くような気持ちを抱いたため、急いで打ち消したが。