政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

三橋は胃のあたりを押さえて顔をしかめた。


「救急車を呼びましょう」


大事があったら大変だとスマートフォンを取り出したが、彼に制された。


「いや、いい」
「ですが、ここでは……。どこか座れるところに入りませんか?」


人通りが多いうえ、地べたに座っているのはよくない。
明花はあたりを見渡し、すぐ近くにチェーンのコーヒーショップを見つけた。


「あそこに行きましょう」
「いや、ここでいいから」
「そうはいきません」


彼の腕を強引に掴んで立たせようとすると、諦めたのか三橋はふらふらと立ち上がった。

コーヒーショップまで一〇〇メートルあまり。意外と足取りのしっかりした三橋を支えながら、明花はそこに向かった。
< 235 / 281 >

この作品をシェア

pagetop