政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「なにか飲みますか?」
「いらない」
「それじゃ、ここに座っていてください」


なにも注文せずに居座るわけにはいかない。明花は自分の分のコーヒーを買い、水をもらって彼の席に戻った。


「これ、どうぞ」


向かいに座った彼に冷たい水のカップを差し出す。


「悪いね」


口をつけて、三橋はひと息ついた。


「貧血ですか?」


顔色は悪くはない。


「食べすぎ」
「はい?」
「聞こえない? ただの食べすぎ」


三橋は少しだけバツが悪そうに明花から目を逸らした。
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