政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「なんだ、それならよかったです」
具合が悪いわけではなくほっとする。
だから救急車は遠慮したのだ。
「よかった? 普通、そんな理由かよって怒るだろ。手を貸して損したって」
三橋は眉間に皺を寄せて不服そうだ。
なぜか明花のほうが怒られている。
「病気のほうが大ごとですし困ります。空腹で行き倒れるならまだしも、満腹が原因なんて幸せですから」
人生の成功者である三橋なら、蹲るほどお腹を空かせることもないだろうが。
胸を撫で下ろし、明花はコーヒーに口をつけた。
「キミ、変わってるな」
「……そうですか?」
貴俊と結婚する前なら、少しだけ人と変わった人生を送っていたかもしれないが。
「それに以前会ったときと印象がちょっと変わった」