政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

まじまじと見られ、瞬きを激しく繰り返す。



「あのときはオドオドして自信なさげな感じだったけど」
「それはきっと貴俊さんのおかげです」


もしも三橋の言うことが事実なら、彼と出会い恋に落ちたから。貴俊が明花の人生を一八〇度変えたのだ。


「へえ、なんかムカつく」
「まだ満腹感がひどいですか?」
「そうじゃない。桜羽がムカつくって言ってる。大学のときからそう。クールでなに考えてるかわかんないくせに、やたらモテて。あんまりしゃべんないのになぜか周りにいつも人がいて。つくづく気に食わないね」


三橋はそう毒づくと、水を一気に飲み干した。


「貴俊さんのこと、お好きなんですね」
「そんなこと、ひと言でも言った? 気に食わないって言ったんだけど」
「ごめんなさい。でも私には〝好き〟って聞こえてしまって。なんかこう、ヤキモチって言うんでしょうか。そう感じただけなんです。ごめんなさい」
「ヤキモチって」
< 238 / 281 >

この作品をシェア

pagetop