政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
挨拶抜きでしゃべりだす。
『なにかあったのか』
「三橋さんと偶然お会いして」
『ソウと?』
声のトーンが一気に低くなった。
「歩道で具合が悪くなっているのを見かけて、近くのコーヒーショップにいるんです。あ、体調は大丈夫なので心配はないのですが」
『今どこ』
貴俊に尋ねられ、コーヒーショップの名前を伝える。
『すぐに行く』
「えっ、あっ、貴俊さ」
三橋は大丈夫だから、これから向かうと言おうとしたが、一方的に電話は切られてしまった。
切れたスマートフォンを見つめ、ふぅと息を吐き出す。
「タカ、なんだって?」
「ここへ来るそうです」
「だろうね」