政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

ふっと笑い、三橋は「やっぱ俺もコーヒー飲もうかな」と立ち上がった。
アイスコーヒーを片手に戻った彼は、カランコロンと涼しげな音を立てながら飲みはじめる。


「ところで、どうして立てなくなるほど食べたんですか?」
「レストランの研究。いろんな店に行って目と舌を肥やさないと、いい店なんて作れない」


さすがいくつものレストランを経営する実業家である。


「今、俺のこと見なおしただろう」
「えっ、……あっ」
「ねぇ、キミさ、貴俊はやめて俺と付き合ってみない?」


三橋が頬杖をついてテーブルに身を乗り出したそのとき――。


「俺の妻を口説くとはいい度胸だ」


三橋の背後から現れた貴俊が、彼の肩をトンと叩く。走ってきたのか、いつもしっかりセットしている髪が乱れている。

よほど強い衝撃だったらしく、三橋は肘をテーブルから滑らせ、体が斜め四十五度に傾いた。
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