政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ちょっとしたジョークに決まってるだろ」
「ソウは冗談と本気の境界線が曖昧なんだよ」
貴俊の手厳しいツッコミに三橋は肩を上げ下げし、明花におどけた顔を向ける。
(パーティーで会ったときにも感じたけど、ふたりはお互いに言うほど仲が悪いわけじゃなさそう)
思ったことを正直に言い合えるのだから。明花が義理の家族から向けられていた悪意とは全然違う。
「明花、行こう」
「ああ、行け行け」
三橋は手で虫でも追い払うようにするが、貴俊に鋭く睨まれて眉毛を上げ下げした。
「でも、お時間大丈夫ですか? ここで見てもらってもいいんですけど」
会社から近いとはいえ、ここまで足を伸ばせば時間オーバーではないか。
「秘書に明花を紹介しておきたい」
明花はまだ、貴俊の会社関係者に会ったことはない。