政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

結婚は覚悟しているが、相手についてあまりにも知らないため不安を覚えずにはいられない。

父から縁談の打診があったあと、明花なりに相手についてネットで調べたが、佳乃が言っていたように顔写真の一枚も出てこなかった。

ミネラルウォーターで何度も喉を潤しは呼吸を整えていると、ドアが開き店の女性スタッフが顔を覗かせる。


「お連れ様がお見えになりました」


頭を下げたスタッフの後ろから、先に女性が姿を現した。

事前情報で同行者は相手の伯母だと聞いている。薄紅色の着物に身を包み、目鼻立ちのはっきりとした顔立ちの美人だ。夜会巻きのヘアスタイルが華やかな印象を醸し出す。


「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、私どもも到着したばかりですので、どうかお気遣いなく」


秋人と揃って立ち上がり、頭を下げる。女性のすぐ後ろから現れた背の高い男性を見て、明花は思わず息を飲んだ。

予想していた容姿とは、まるでかけ離れていたせいだ。
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