政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「タカ、そろそろ時間じゃないか?」
「明花さんの準備が整ったみたいよ」


高柳と美也子が揃って手招きをする。その背後でひょっこり顔を出したのは、天敵の三橋だ。
招待する予定はなかったのに、彼じきじきに貴俊に連絡をよこしてきた。


『俺を招待しなかったら承知しないからな』


そんな脅し文句に屈したのは、明花から『三橋さんは貴俊さんのことがきっと大好きなんですよ』というひと言だった。

完成した招待客リストは、三橋の気ままな立候補で書きなおしとなった。


「秋の空を眺めて、なに感傷的な気分に浸ってんだよ。そんなロマンティストだったか?」
「ああ。知らなかったとは残念だな」


三橋の悪態を軽くかわし、彼らの元――いや、愛する妻の元へ足を向けた。
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