政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

パイプオルガンの荘厳な音色がチャペルに響き渡る。
父親に手を引かれ、一歩ずつゆっくり貴俊の前まで歩みを進める明花に貴俊は見惚れた。

マーメイドラインのドレスを着た明花は神々しいほど。まさに女神と言っていい。

(この女性が、本当に俺の妻でいいのだろうか)

世の中には美しい女性が数知れず。しかし内面から滲み出た、真に美しい明花に敵う人はいないだろう。
参列者の間からもうっとりするため息が波のように漏れていく。

もはや神父の誓いの言葉も耳に入らない。
貴俊は隣に立つ明花から目を離せず、真横を向いたまま。神父から咳払いをされ、仕方なく前を向いた。


「それでは誓いのキスを」


ベールを上げ、明花と見つめ合う。目を閉じた彼女にそっと唇を重ねた。

それは間違いなく世界で一番神聖で、幸せなキスだった。
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