政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

意志の強そうな切れ長の目と高く通った鼻筋、上下均等の薄い唇などそれぞれのパーツの美しさもさることながら、それらが見事な調和を生み出している。サイドを整髪料で撫でつけた黒髪や三つ揃いのネイビーのスーツからは清潔感が溢れ、ダメ出しする点などひとつもないほど彼の容姿にはいっさい悪い点がなかった。

大袈裟かもしれないが、これほど優れた容姿の人間が同じ世界にいるのが信じられない。

思わず凝視していると、貴俊は凪いだ湖面のような瞳で明花を見つめ返した。少し冷ややかな視線なのは、明花が呆けたような顔をしたせいかもしれない。

弾かれたように目線を外し、急いで口元を引きしめる。明花たちの向かいの席に案内されたふたりに合わせて腰を下ろした。


「お初にお目にかかります、桜羽八重(やえ)と申します」
「初めまして、雪平秋人です。このたびは結構なお話を頂戴し、誠にありがとうございます。こちらが娘の……」
「明花です。よろしくお願いいたします」


八重の挨拶に続き、秋人の言葉を受けて明花も自己紹介する。


「桜羽貴俊と申します。本日はお忙しいなか、お時間を作っていただきありがとうございます」
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