政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

挙式と披露宴を終え、貴俊と明花はある場所へ向かっていた。
明花がどうしても行きたい場所があると、珍しくわがままを言ったのだ。


『私、会いたい人がいるんです』
『会いたい人? 誰?』


まさか式に呼んでいない義母や義姉ではないだろうなと予想し、つい険しい顔になる。


『お義母様です』


明花がそう言ったときには、やはりそうきたかと頭を抱えた。
なぜ、こんなめでたい日に。


『私の亡くなった母のお墓にはお参りしてもらいましたけど、私はまだ貴俊さんのお義母様のお墓には行っていないんです。紹介してもらえませんか?』
『〝お義母様〟って、俺の?』
『もちろんです。ほかにどなたかいますか?』


明花が不思議そうに尋ねる顔を見て、義理のふたりのことなど頭にこれっぽっちも残っていないのだとわかり嬉しくなる。


『いないか。だけど今日?』
< 270 / 281 >

この作品をシェア

pagetop