政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
エピローグ
目の前に並んだ三つの小箱を前にして、明花は混乱していた。
リースやツリーなどの飾りつけをした華やかなリビングには、クリスマスにちなんだ音楽が静かに流れるが、明花はひとり茫然と立ち尽くす。
なにげなく開けた引き出しの奥から出てきたベルベット素材の蓋を開けると、想像もしないものが出てきたのだ。
明花は同じものを持っている。でもそれが、ほかに三つも出てきたのだ。
「どういうこと……?」
ぽつりと呟きながら、そのうちのひとつを手に取る。
それは明花が貴俊から贈られた婚約指輪とデザインが同じものだった。
ところが薬指に嵌めてみると、サイズがわずかに大きい。
「え? それじゃこっちは?」
べつのリングを薬指に滑らせるが、今度は途中で止まる。最後のひとつは三つの中で一番大きなものだった。
同じものが、この家には四つもある。
(ほかの誰かのために用意したもの? ……のわけはないわよね)